東京高等裁判所 昭和54年(ネ)2259号 判決
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【判旨】
二<証拠>を総合すると、被控訴会社は、訴外三井物産株式会社(以下「訴外会社」という。)がその株式の九九パーセントを保有し、昭和五三年当時取締役五名のうち代表取締役一名を含む三名が訴外会社からの出向者ないしその出身者で、訴外会社のいわゆる関連会社の一つであること、被控訴会社の取締役の任期は就任後二年内の最終の決算期(三月末日)に関する定時株主総会(毎年六月に招集される。)終結の時をもつて終了することとされていること、被控訴会社においては、株主総会での取締役選任決議に先立つて、実際上取締役会において、株主である訴外会社の意向をも打診して人選をした上取締役の選任候補者名簿を作成し、これを株主総会に諮つて選任するのが通例であつたこと、控訴人は、昭和三五年、被控訴会社発足の当初から被控訴会社の従業員であつた者であり、昭和五一年には取締役に再任され、昭和五三年六月の定時株主総会当時は右二期目の任期満了時に当たつていたこと、控訴人は同年五月一〇日ごろ、被控訴会社代表者岡幹雄から「貴役、五三年三月期総会を以つて、任期満了退任ノコト。五三年三月期総会に於て、全役員任期満了改選のこととなりますが、貴役は再選候補として推薦されませんので任期満了を以つて退任となりますことあらかじめ御通告申上ます。理由としては、主観に片寄つた目先的論理に固執し、大局的視野協調性に欠け、役員会決議事項、会社方針に反する私見を内外に流布し対外信用に大きな問題を残したこと等々である。」旨記載された書面を交付されたこと、同月一九日開催の被控訴会社取締役会では控訴人の反対にもかかわらず、同人を含まない取締役候補者を株主総会に附議することとしたこと、岡幹雄及び取締役会が右のような態度をとつたについては控訴人の再任に消極的な訴外会社の意向があつたことが認められ、右認定に反する証拠はない。
三控訴人は、当時被控訴会社においては取締役の再選について請求の原因2のような慣行が存し、右慣行に基づき、控訴人は、任期満了に当たり、被控訴会社株主総会において取締役の候補者として挙示せらるべき権利を有した旨主張する。
<証拠>を総合すると、従前被控訴会社の取締役は、任期が満了した場合、年輩者であつて健康上の理由から、又は自己の都合から退任を希望した場合を除き、再任されるのが大部分であつたこと、しかし、訴外会社からの出向者は訴外会社の意向によつて進退が決せられたこと、これまで、被控訴会社の取締役であつた者の退任の時期は、従業員の定年年齢である満五八歳以上のものが多いが、右年齢未満で退任した取締役はこれまで控訴人以外に数人あり、それらは、訴外会社の意向によるもの、自発的意思によるもの、非違行為の噂があつたことによる退任の勧めに応じたものであることが認められ、右認定に反する証拠はない。
このように、これまで被控訴会社においては取締役の任期満了時に再任され、従業員の定年年齢である満五八歳を超えて退任した者が多いことはうかがわれるが、<証拠>によると、それらは、それぞれの事例ごとに、個別的事情の下で、取締役会としても、株主の意向としても、その者を再選し、再任させることに格別問題がないと認めた事例が重なつたことによるものであること、被控訴会社には取締役の再選の基準について格別のとりきめはなく、また、取締役会の構成員においても、株主においても、いつたん取締役となつた者は、満五八歳に至るまでは、その者に不都合な行為があるとき、その者が再選を希望しなかつたとき、その者に心身の故障があるときを除いて再選しなければならない拘束を受けるというような意識は少なくとも一般には全く存しなかつたことを認めることができ、原審における控訴人本人尋問の結果によつても右認定を左右するに足りない。
そして、他に控訴人主張のような慣行が存在したことを認めるに足りる証拠は存しない。
(園田治 菊池信男 柴田保幸)